タバコ休めみたいな道中

休んでいる間も命を削るのはまるでタバコのよう

「書く」ことで承認欲求より自己肯定を感じたかった

僕はかれこれ、3年ほど「書く」ことを通じて自分を発信してきた。いつか僕の発した言葉で誰かを勇気づけることができれば、と持ち前の性格を社会に還元させたい一心でなんとか続けてきた。そのための発信に関する情報にもまれながら色々な書き方を真似たり、扱うジャンルを広げるために知識を増やす努力もしてきた。正解のない「自分らしい発信」を追い続ける日々にもそれなりの充実感を得ていたが、誰かの役に立てたのか数字ではわからないままだが。

 

大学生、それも留年するかもしれない可能性を振るえない学生は、漠然と進路や将来の不安がピークになるのが2月だ。そんな自分も3度目の留年になるかならないかの不安に押しつぶされそうだ。それでも進級した時のための就活で自己PRでは強みや夢を語り、中退した場合の生き方を模索する日々が続いている。そんな日々の中で上坂徹さんの『書いて生きていくプロ文章論』がかき集めた本の中から出てきた。300ページほどの少し厚みのある本。自分らしい発信を見つけ、仕事にされてきた方の「書く」とは何だろう、と手に取り読み進めていた。

 

本著は7章からなる構成で「書く」こと、それから「聞く」こと、そしてそれらを通じて「働く」ことを交えながら話が展開されていた。今回は、その中でも書くことに関してハッとさせられたことに絞って綴りたいと思う。

 

これまで、書くことに関して触れてきた情報から、2つに分けることができるのではと、考えるようになった。ひとつはフレームワークのようにある程度の型や手法を伝えてくれるもの。テンプレ、書き方と言えばもっとわかりやすいだろうか。読みやすさ伝わりやすさには論法のように決まったやり方があり、まずは当てはめてやってみよう、という感じだろうか。個人の向き不向きはあれど、成功パターンは存在することを知るには勉強になる。もうひとつが書く以前、気持ちの確認や頭の整理をうながすもの。だれのために、どのように、どうやって、と5W1Hのような構成をこれから文章を綴る前に行おうというもの。今回の書籍は後者になるだろう。

 

ブログ更新が今や趣味と化している自分にとって当たり前だと思っていたことを、本著は丁寧に確認してくれる先生のような存在になった。一方的に発信し続ける習慣から根源的な動機や目的をすっかり忘れてしまっていたことに気づかせてもらった。同じような悩みを持つ同世代と思考を共有したい、悩みを抱えたまま遠回りしてほしくないから自分の乗り越え方を試してほしい、かつてこんな気持ちから変化の軌跡を残しておかなければと書き始めたことまで、読み進めながら思い出すことができた。

 

それなのに、ここ最近の発信はどうした。最初に抱いた動機すら放棄して、ただ自分の思考を吐き捨てるようなことしかしていない。キャッチボールでもなければバトンを渡すことも意識していなかったのだから、誰かに届くわけはないだろうに。そんな反省が後を絶えなかった。

 

「持ち前の性格を社会に還元したい」「同じような悩みを持つ同世代と思考を共有したい」これらは、はっきりいえば承認欲求からくる動機だったかもしれない。誰かのためになることで社会とのつながりを保ちたい気持ちのあらわれだったかもしれない。それでも発信の対象を意識しなくなったのは、それ以上に自己肯定を求めすぎていたからかもしれない。文章には結末や結果の良し悪しに関わらず、必ず終わりへ向かう流れが生まれるだろう。そこに「自分は悪くなかった」「自分はこれからだ」と慰めと励ましで締めくくることが多くなっていた。かわいそうな自分に酔っていただけなのだろうか。ナルシストよりもタチが悪く、近づきたいとは自分でも思えないのだから他人ならなおのことだろう。

 

それから、「同じような悩みを持つ同世代」というのも曖昧なターゲット像だった。もっと細かなそれぞれの違いに配慮しなければ言葉はありきたりになってしまう。特に悩みを抱えた時は、ありきたりな慰めや他人話を受け付けられない状態だと経験としてわかっていたのに。性別や環境や価値観の違いだって千差万別。自分が抱えた悩みに「そんなことで」と言われてしまうほど苦しいことも知っているのに、忘れてしまっていた。実際の経験からわかっていたことも、勝手に当たり前として意識することをやめていたことに気づけた。ターゲットが詳細なほど言葉が届きやすくなることを改めて意識していきたい。

 

これからも自分らしく書くことを続けていきたいと考えている。きっと最後まで読んで頂けた方も少なからず同じような考えをお持ちでしょう。今回の読書から自分らしく「書く」ことと、誰かのためになるように「書く」ことの違いをきちんと振り返り、きちんと分けて考えることからできるようになったと思っている。誰かに届き始める頃にやっと僕らしいリズムの文章ができあがっていくのだと焦らず、また、根源的な動機や目的を忘れず、この学びから心機一転、書くことを通して示していきたい。